無風換算KAZOERU

100m・10.00秒・追い風+2.0m/s(標高0m)の記録を、無風・海抜0mで走った場合の記録に換算すると、Mureikaの簡易式で約10.11秒、Moinatらの実データ式で約10.08秒と推定されます(研究者の式による推定値を小数第2位に四捨五入しています)。追い風が+2.0m/s以下のため、風の条件では公認記録から外れません。公認記録には風以外の条件もあります。

無風換算
秒
m/s
m

標高を計算に入れるのは、100mのMureikaの簡易式だけです。空欄は0mとして計算します。

無風・海抜0mに換算した記録(推定)
式換算後の記録差
Mureikaの簡易式10.11秒+0.11秒
Moinatらの実データ式10.08秒+0.08秒

この換算は、研究者が論文で示した式による推定です。実際に風がなかった場合の記録を保証するものではなく、公式記録や公認の判定には使えません。差は、換算後の記録から入力した記録を引いた値です。

風の条件(追い風の上限)
入力した風速+2.0m/s
追い風の上限+2.0m/s
追い風が上限を超えるか超えない
風速を測る時間10秒間

追い風が+2.0m/s以下のため、風の条件では公認記録から外れません。公認記録には風以外の条件もあります。

スターターの信号器の発射(閃光・煙)から測ります。

使い方

  1. 種目を選ぶ(100m・200m・100mハードル・110mハードル・走幅跳・三段跳は換算の式がある。50m・60mなどは風の条件の判定だけ)
  2. 記録を入れる(走・ハードルは秒、跳躍はm)
  3. 風速計が測った風速を入れる(追い風は+、向かい風は-)。「+2.0」「-1.5」「−1.5」「ー1.5」のどれでも読み取れる。マイナスを打てないときは、欄の左の「±」ボタンで切り替えられる
  4. 100mのMureikaの簡易式だけは、標高(m)も計算に入れる。空欄は0mとして計算する
  5. 式ごとの換算後の記録と、風速が追い風の上限を超えるかが表示される。URLに条件を付けて開くと、その条件で最初から表示される(例: /mufu-kansan/?ev=m200&t=20.50&w=-0.8)。計算欄の下の「この条件のURLをコピー」でも同じ形のURLを作れる

無風換算とは?

無風換算とは、追い風や向かい風のなかで出た記録を、風がなく海抜0mの場所で出した場合の記録に直して推定することです。このツールでは、研究者が論文で示した式(研究の式)で計算します。競技規則に定められた換算ではなく、結果は推定です。

考え方としては、追い風のなかで出た記録から風の助けを取り除くので、走・ハードルでは換算後の記録が遅く(秒が増え)、跳躍では短く(mが減り)なります。向かい風のときは、反対向きに換算します。風速は、追い風を+、向かい風を-で表します。

換算の式は、100mがMureikaの簡易式とMoinatらの実データ式の2つ、200m・100mハードル・110mハードル・走幅跳・三段跳がMoinatらの実データ式です。50m・60mなどには換算の式がなく、風の条件(追い風の上限)の判定だけができます。

100mの10.00秒は、風速別に無風換算するとどうなる?(早見表)

Mureikaの簡易式で10.00秒を無風・海抜0mに換算すると、追い風+2.0m/sなら約10.11秒、向かい風−2.0m/sなら約9.87秒です(標高0m)。行の風速をタップすると、その条件で計算欄が開きます。

風速無風換算差上限超え
−2.0m/s9.87秒−0.13秒超えない
−1.5m/s9.90秒−0.10秒超えない
−1.0m/s9.94秒−0.06秒超えない
−0.5m/s9.97秒−0.03秒超えない
0.0m/s10.00秒0.00秒超えない
+0.5m/s10.03秒+0.03秒超えない
+1.0m/s10.06秒+0.06秒超えない
+1.5m/s10.08秒+0.08秒超えない
+2.0m/s10.11秒+0.11秒超えない
+2.5m/s10.13秒+0.13秒超える
+3.0m/s10.15秒+0.15秒超える

表は、Mureikaの簡易式・標高0m・記録10.00秒で求めた値です。Moinatらの実データ式の値は、行の風速をタップして開いた計算欄で確かめられます。差は、換算後の記録から入力した記録(10.00秒)を引いた値です。「上限超え」は、追い風が+2.0m/sを超えることを表します(このツールの上限の判定は、追い風が+2.0m/sを超えるかどうかだけを見ています)。

どうやって計算する?(式と変数)

記録と風速(100mのMureikaの簡易式は標高も)を、研究者が論文で示した式に入れて、無風・海抜0mの記録を求めます。

Mureikaの簡易式(100m)は、J. R. Mureika氏が陸上競技の専門誌New Studies in Athletics(2000年)の論文で示し、2006年の論文(Canadian Journal of Physics 84巻)でも紹介している近似式です。公式記録・風速・標高を入れるだけで、無風・海抜0mで走った場合の100mの記録を推定できる近似式として示されています。著者は、より詳しい数値モデルで求めた補正量を、この式で手早く計算できると述べています。

無風・海抜0mの記録 = 記録 × [ 1.03 − 0.03 × exp(−0.000125 × 標高) × (1 − 風速 × 記録 ÷ 100)² ]

Moinatらの実データ式は、M. Moinat氏・O. Fabius氏・K. S. Emanuel氏が2018年に学術誌European Journal of Sport Scienceで発表した論文(オープンアクセス)の式です。オランダ・ベルギーの大会とダイヤモンドリーグの記録(約15万件を集め、条件に合う約5万2千件を使用)から、風速と記録の関係を統計で求めた式です。ハードルは、100mハードルと110mハードルをまとめて求めた式です。

100m無風の記録 = 記録 − 0.0449 × 風速 + 0.009459 × 記録 × 風速 − 0.0042 × 風速²
200m無風の記録 = 記録 + 0.090 × 風速 − 0.010 × 風速²
100mハードル・110mハードル無風の記録 = 記録 + 0.093 × 風速 − 0.010 × 風速²
走幅跳無風の記録 = 記録 − 0.029 × 風速
三段跳無風の記録 = 記録 − 0.069 × 風速 + 0.009 × 風速²

計算の例です。100mで記録10.00秒・追い風+2.0m/s・標高0mのとき、Mureikaの簡易式は次のとおりです。

10.00 × [ 1.03 − 0.03 × exp(−0.000125 × 0) × (1 − 2.0 × 10.00 ÷ 100)² ]
= 10.00 × [ 1.03 − 0.03 × 1 × 0.64 ] = 10.00 × 1.0108 = 10.108(小数第2位に四捨五入して10.11秒)

同じ条件で、Moinatらの実データ式は次のとおりです。

10.00 − 0.0449 × 2.0 + 0.009459 × 10.00 × 2.0 − 0.0042 × 2.0² = 10.08258(小数第2位に四捨五入して10.08秒)

「追い風参考」になるのは風速何m/sから?

追い風が+2.0m/sを超えると、日本陸連の公認記録規程では参考記録として区別されます。+2.0m/sちょうどまでは、風の条件では公認記録から外れません。公認記録には、公認競技会で出した記録であることなど、風以外の条件もあります。

公認記録規程の条文では「参考記録」という言葉を使っています。条文の該当部分は次のとおりです。

ワールドアスレティックスの規則では、屋外の200m以下の種目(ハードルを含む)と走幅跳・三段跳の記録は、風速が平均秒速2mを超えると世界記録としては公認されません。混成競技は、種目ごとではなく、風速を測る種目の風速の平均が+2.0m/sを超えるかどうかで判定します。

風速はどう測る?

風速は、種目ごとに決まった時間、決まった位置に置いた風向風速計で測ります。風向風速計の測る面は、高さ1.22m±5cmで、トラック(跳躍では助走路)から2m以内に置くと定められています(トラックは競技規則 TR17.10・17.12、跳躍は競技規則 TR29.10〜29.12)。主な種目の測り方は次のとおりです。

種目風速を測る時間風速計の位置追い風の上限
100m10秒間ゴールの50m手前+2.0m/s
200m10秒間ゴールの50m手前+2.0m/s
100mハードル13秒間ゴールの50m手前+2.0m/s
110mハードル13秒間ゴールの50m手前+2.0m/s
走幅跳5秒間踏切線から20m+2.0m/s
三段跳5秒間踏切線から20m+2.0m/s

測り始めは、種目によって次のように決まっています。

条文では、100m・ハードルなどの風速は「スターターの信号器の発射(閃光/煙)から」測るもの(200mは、先頭の走者が直走路に入った時から10秒間。TR17.12)、跳躍の風速は「競技者が助走路の脇に置かれたマークを通過する時から5秒間計る」もの(TR29.12)と定められています。いずれも日本陸上競技連盟の競技規則(2026年度版)です。

風速計の読みの端数は?

風速計の読みは、小数第2位が0でない限り、正の方向に0.1m/s単位へ繰り上げて記録されます。たとえば+2.03は+2.1、−2.03は−2.0になります。

条文(日本陸上競技連盟 競技規則(2026年度版・正誤表で修正) TR17.13)には、「小数第2位が0でない限り、正の方向に秒速1mの10分の1の単位まで繰り上げる」とあります。読みと、記録される風速の例は次のとおりです。行の風速をタップすると、その読みで計算欄が開きます。

風速計の読み記録される風速上限超え
+2.0m/s+2.0m/s超えない
+2.01m/s+2.1m/s超える
+2.03m/s+2.1m/s超える
+2.1m/s+2.1m/s超える
−2.0m/s−2.0m/s超えない
−2.01m/s−2.0m/s超えない
−2.03m/s−2.0m/s超えない
−2.1m/s−2.1m/s超えない

「上限超え」は、記録される風速が追い風の上限(+2.0m/s)を超えることを表します。たとえば+2.01は+2.1と記録されるので、+2.0m/sを超えます。計算欄は、入力した風速をそのまま使って換算します。

式によって値が違うのはなぜ?

研究によって式が異なるため、同じ記録でも推定値に差が出ます。この例(100m・10.00秒・追い風+2.0m/s)では、Mureikaの簡易式が約10.11秒、Moinatらの実データ式が約10.08秒で、差は約0.03秒です。

このツールは、どちらの式の値が実際に近いかを判定していません。

このツールの前提

よくある質問

無風換算した記録は、公式記録や公認の判定に使えますか?

使えません。この換算は、研究者が論文で示した式による推定です。実際に風がなかった場合の記録を保証するものではなく、公式記録や公認の判定には使えません。

追い風が+2.0m/sちょうどの記録は、参考記録になりますか?

追い風が+2.0m/sを超えると、日本陸連の公認記録規程では参考記録として区別されます。+2.0m/sちょうどまでは、風の条件では公認記録から外れません。公認記録には、公認競技会で出した記録であることなど、風以外の条件もあります。

風速のマイナス(向かい風)は、どう入力しますか?

風速の欄に「-1.5」「−1.5」のように打つほか、かな入力で打った「ー1.5」も読み取ります。スマートフォンなどでマイナスを打てないときは、欄の左の「±」ボタンで、追い風(+)と向かい風(-)を切り替えられます。

向かい風の記録も換算できますか?

できます。風速にマイナスの値(向かい風)を入れて換算します。風の条件の欄は、追い風が+2.0m/sを超えるかどうかだけを判定します。

50mや60m、150mの記録は換算できますか?

50m・55m・60m・150m・50mハードル・55mハードル・60mハードルは、このツールでは換算の式を用意していません。風の条件の判定だけができます。

標高が高い競技場の記録は、どう換算されますか?

標高を計算に入れるのは、100mのMureikaの簡易式だけです。New Studies in Athletics の論文の補正量の表は、標高0〜2500mです。Moinatらの実データ式については、データのほとんどが海抜0m付近の大会の記録で、標高の高い会場にはそのままは当てはまりません。この式は標高を計算に入れていません。

「参考値」と表示されるのは、どんなときですか?

風速・標高・記録のどれかが、式の論文が扱った範囲の外にあるときに表示し、理由を添えます。Mureikaの簡易式の範囲は、風速が−5〜+5m/s、標高が0〜2500m、記録が論文の計算例(男子・女子)の最小から最大までの9.69〜10.97秒です。Moinatらの実データ式の範囲は、風速が−2〜+2m/s、記録が種目ごとの論文のデータの範囲(100mは9〜20秒など)です。

女子や、記録の遅い選手にも使えますか?

このツールは男女を分けずに計算します。Mureikaの簡易式について、対象は100mです。著者は、定数を1.027・0.027とした同じ形の式を示した2000年の論文で、男子にも女子にも使えると述べています。著者の2000年の論文(定数を1.027・0.027とした形)は、男女の100mの歴代上位の記録(男子9.69〜10.03秒・女子10.49〜10.97秒)で計算例を示しています。Moinatらの実データ式について、論文のデータの範囲は、100mが9〜20秒、200mが19〜40秒、ハードルが12〜25秒、走幅跳が3〜10m、三段跳が7〜19mです。100mについてMoinat氏らの論文は、記録が遅い選手ほど風の影響が大きく、13秒前後の選手は10秒前後の選手より2.0m/sの追い風から受ける有利さが69%大きいと報告しています。

風速計の読みと、選手が受けた実際の風はずれますか?

Mureikaの簡易式の著者の2001年の論文(Canadian Journal of Physics 79巻)は、競技場の風速計の読みと実際の風とのずれが±0.7m/s程度になりうるという別の研究者の指摘も紹介しています。Moinatらの実データ式では、風が走っている間ずっと同じとは限らないこと、風速計の読みと実際の風とのずれは、式に入れていません。

混成競技も、種目ごとに追い風の上限で判定しますか?

混成競技は、種目ごとではなく、風速を測る種目の風速の平均が+2.0m/sを超えるかどうかで判定します。このツールの風の条件の欄は、1種目の風速で判定します。

大会記録にも、風の条件は同じようにかかりますか?

大会記録は、大会の規定で風の条件を考慮しないと定めている場合があります。風の条件を考慮するかどうかは、大会の規定でご確認ください。

出典

換算の式(論文)

風の条件(競技規則)

当サイトは民間のサイトで、日本陸上競技連盟・ワールドアスレティックス・各論文の著者が作成・監修したものではありません。換算は研究者の式による推定で、公式記録や公認の判定には使えません。公認記録の扱いは、大会の主催者・競技団体にご確認ください。

最終更新日