使い方
- 種目を選ぶ(100m・200m・100mハードル・110mハードル・走幅跳・三段跳は換算の式がある。50m・60mなどは風の条件の判定だけ)
- 記録を入れる(走・ハードルは秒、跳躍はm)
- 風速計が測った風速を入れる(追い風は+、向かい風は-)。「+2.0」「-1.5」「−1.5」「ー1.5」のどれでも読み取れる。マイナスを打てないときは、欄の左の「±」ボタンで切り替えられる
- 100mのMureikaの簡易式だけは、標高(m)も計算に入れる。空欄は0mとして計算する
- 式ごとの換算後の記録と、風速が追い風の上限を超えるかが表示される。URLに条件を付けて開くと、その条件で最初から表示される(例:
/mufu-kansan/?ev=m200&t=20.50&w=-0.8)。計算欄の下の「この条件のURLをコピー」でも同じ形のURLを作れる
無風換算とは?
無風換算とは、追い風や向かい風のなかで出た記録を、風がなく海抜0mの場所で出した場合の記録に直して推定することです。このツールでは、研究者が論文で示した式(研究の式)で計算します。競技規則に定められた換算ではなく、結果は推定です。
考え方としては、追い風のなかで出た記録から風の助けを取り除くので、走・ハードルでは換算後の記録が遅く(秒が増え)、跳躍では短く(mが減り)なります。向かい風のときは、反対向きに換算します。風速は、追い風を+、向かい風を-で表します。
換算の式は、100mがMureikaの簡易式とMoinatらの実データ式の2つ、200m・100mハードル・110mハードル・走幅跳・三段跳がMoinatらの実データ式です。50m・60mなどには換算の式がなく、風の条件(追い風の上限)の判定だけができます。
100mの10.00秒は、風速別に無風換算するとどうなる?(早見表)
Mureikaの簡易式で10.00秒を無風・海抜0mに換算すると、追い風+2.0m/sなら約10.11秒、向かい風−2.0m/sなら約9.87秒です(標高0m)。行の風速をタップすると、その条件で計算欄が開きます。
| 風速 | 無風換算 | 差 | 上限超え |
|---|---|---|---|
| −2.0m/s | 9.87秒 | −0.13秒 | 超えない |
| −1.5m/s | 9.90秒 | −0.10秒 | 超えない |
| −1.0m/s | 9.94秒 | −0.06秒 | 超えない |
| −0.5m/s | 9.97秒 | −0.03秒 | 超えない |
| 0.0m/s | 10.00秒 | 0.00秒 | 超えない |
| +0.5m/s | 10.03秒 | +0.03秒 | 超えない |
| +1.0m/s | 10.06秒 | +0.06秒 | 超えない |
| +1.5m/s | 10.08秒 | +0.08秒 | 超えない |
| +2.0m/s | 10.11秒 | +0.11秒 | 超えない |
| +2.5m/s | 10.13秒 | +0.13秒 | 超える |
| +3.0m/s | 10.15秒 | +0.15秒 | 超える |
表は、Mureikaの簡易式・標高0m・記録10.00秒で求めた値です。Moinatらの実データ式の値は、行の風速をタップして開いた計算欄で確かめられます。差は、換算後の記録から入力した記録(10.00秒)を引いた値です。「上限超え」は、追い風が+2.0m/sを超えることを表します(このツールの上限の判定は、追い風が+2.0m/sを超えるかどうかだけを見ています)。
どうやって計算する?(式と変数)
記録と風速(100mのMureikaの簡易式は標高も)を、研究者が論文で示した式に入れて、無風・海抜0mの記録を求めます。
Mureikaの簡易式(100m)は、J. R. Mureika氏が陸上競技の専門誌New Studies in Athletics(2000年)の論文で示し、2006年の論文(Canadian Journal of Physics 84巻)でも紹介している近似式です。公式記録・風速・標高を入れるだけで、無風・海抜0mで走った場合の100mの記録を推定できる近似式として示されています。著者は、より詳しい数値モデルで求めた補正量を、この式で手早く計算できると述べています。
- 記録: 風の影響を受けた公式記録(秒)
- 風速: 風速計の読み(m/s)。追い風が+、向かい風が-
- 標高: 競技場の標高(m)
Moinatらの実データ式は、M. Moinat氏・O. Fabius氏・K. S. Emanuel氏が2018年に学術誌European Journal of Sport Scienceで発表した論文(オープンアクセス)の式です。オランダ・ベルギーの大会とダイヤモンドリーグの記録(約15万件を集め、条件に合う約5万2千件を使用)から、風速と記録の関係を統計で求めた式です。ハードルは、100mハードルと110mハードルをまとめて求めた式です。
- 記録: 風の影響を受けた記録(走・ハードルは秒、跳躍はm)
- 風速: 風速計の読み(m/s)。追い風が+、向かい風が-
計算の例です。100mで記録10.00秒・追い風+2.0m/s・標高0mのとき、Mureikaの簡易式は次のとおりです。
= 10.00 × [ 1.03 − 0.03 × 1 × 0.64 ] = 10.00 × 1.0108 = 10.108(小数第2位に四捨五入して10.11秒)
同じ条件で、Moinatらの実データ式は次のとおりです。
「追い風参考」になるのは風速何m/sから?
追い風が+2.0m/sを超えると、日本陸連の公認記録規程では参考記録として区別されます。+2.0m/sちょうどまでは、風の条件では公認記録から外れません。公認記録には、公認競技会で出した記録であることなど、風以外の条件もあります。
公認記録規程の条文では「参考記録」という言葉を使っています。条文の該当部分は次のとおりです。
- 日本陸上競技連盟 公認記録規程(2026年度版) 第3条①: 屋外の200m以内の競技(ショート・トラックの200mを除く)と走幅跳・三段跳の記録は、「風速が+2.0mを超えた場合」に「参考記録として区別される」。混成競技は「風速を計測する種目の平均秒速が+2.0mを超えた場合」です。
- 日本陸上競技連盟 競技会規則(2026年度版) CR31.14.3(世界記録の条件。日本記録にはCR34.5で準用): 屋外で達成された200m以下の記録について、「走る方向への風速が平均秒速2mを超える場合、記録は公認されない」。
- 日本陸上競技連盟 競技会規則(2026年度版) CR31.17.2(世界記録の条件。日本記録にはCR34.5で準用): 屋外の走幅跳・三段跳の記録について、「跳躍方向への風速が平均秒速2mを超える場合、記録は公認されない」。
ワールドアスレティックスの規則では、屋外の200m以下の種目(ハードルを含む)と走幅跳・三段跳の記録は、風速が平均秒速2mを超えると世界記録としては公認されません。混成競技は、種目ごとではなく、風速を測る種目の風速の平均が+2.0m/sを超えるかどうかで判定します。
風速はどう測る?
風速は、種目ごとに決まった時間、決まった位置に置いた風向風速計で測ります。風向風速計の測る面は、高さ1.22m±5cmで、トラック(跳躍では助走路)から2m以内に置くと定められています(トラックは競技規則 TR17.10・17.12、跳躍は競技規則 TR29.10〜29.12)。主な種目の測り方は次のとおりです。
| 種目 | 風速を測る時間 | 風速計の位置 | 追い風の上限 |
|---|---|---|---|
| 100m | 10秒間 | ゴールの50m手前 | +2.0m/s |
| 200m | 10秒間 | ゴールの50m手前 | +2.0m/s |
| 100mハードル | 13秒間 | ゴールの50m手前 | +2.0m/s |
| 110mハードル | 13秒間 | ゴールの50m手前 | +2.0m/s |
| 走幅跳 | 5秒間 | 踏切線から20m | +2.0m/s |
| 三段跳 | 5秒間 | 踏切線から20m | +2.0m/s |
測り始めは、種目によって次のように決まっています。
- 100m: スターターの信号器の発射(閃光・煙)から測ります。
- 200m: 先頭の走者が直走路に入った時から測ります。
- 100mハードル: スターターの信号器の発射(閃光・煙)から測ります。
- 110mハードル: スターターの信号器の発射(閃光・煙)から測ります。
- 走幅跳: 助走路の脇の目印(踏切線から40m)を通過した時から(助走が40mより短いときは助走を始めた時から)測ります。
- 三段跳: 助走路の脇の目印(踏切線から35m)を通過した時から(助走が35mより短いときは助走を始めた時から)測ります。
条文では、100m・ハードルなどの風速は「スターターの信号器の発射(閃光/煙)から」測るもの(200mは、先頭の走者が直走路に入った時から10秒間。TR17.12)、跳躍の風速は「競技者が助走路の脇に置かれたマークを通過する時から5秒間計る」もの(TR29.12)と定められています。いずれも日本陸上競技連盟の競技規則(2026年度版)です。
風速計の読みの端数は?
風速計の読みは、小数第2位が0でない限り、正の方向に0.1m/s単位へ繰り上げて記録されます。たとえば+2.03は+2.1、−2.03は−2.0になります。
条文(日本陸上競技連盟 競技規則(2026年度版・正誤表で修正) TR17.13)には、「小数第2位が0でない限り、正の方向に秒速1mの10分の1の単位まで繰り上げる」とあります。読みと、記録される風速の例は次のとおりです。行の風速をタップすると、その読みで計算欄が開きます。
| 風速計の読み | 記録される風速 | 上限超え |
|---|---|---|
| +2.0m/s | +2.0m/s | 超えない |
| +2.01m/s | +2.1m/s | 超える |
| +2.03m/s | +2.1m/s | 超える |
| +2.1m/s | +2.1m/s | 超える |
| −2.0m/s | −2.0m/s | 超えない |
| −2.01m/s | −2.0m/s | 超えない |
| −2.03m/s | −2.0m/s | 超えない |
| −2.1m/s | −2.1m/s | 超えない |
「上限超え」は、記録される風速が追い風の上限(+2.0m/s)を超えることを表します。たとえば+2.01は+2.1と記録されるので、+2.0m/sを超えます。計算欄は、入力した風速をそのまま使って換算します。
式によって値が違うのはなぜ?
研究によって式が異なるため、同じ記録でも推定値に差が出ます。この例(100m・10.00秒・追い風+2.0m/s)では、Mureikaの簡易式が約10.11秒、Moinatらの実データ式が約10.08秒で、差は約0.03秒です。
- Mureikaの簡易式: 公式記録・風速・標高を入れるだけで、無風・海抜0mで走った場合の100mの記録を推定できる近似式として示されています。著者は、より詳しい数値モデルで求めた補正量を、この式で手早く計算できると述べています。標高は計算に入れます。著者の2000年の論文(定数を1.027・0.027とした形)は、男女の100mの歴代上位の記録(男子9.69〜10.03秒・女子10.49〜10.97秒)で計算例を示しています。
- Moinatらの実データ式: オランダ・ベルギーの大会とダイヤモンドリーグの記録(約15万件を集め、条件に合う約5万2千件を使用)から、風速と記録の関係を統計で求めた式です。標高は計算に入れていません。論文のデータの範囲は、100mが9〜20秒、200mが19〜40秒、ハードルが12〜25秒、走幅跳が3〜10m、三段跳が7〜19mです。
このツールは、どちらの式の値が実際に近いかを判定していません。
このツールの前提
- この換算は、研究者が論文で示した式による推定です。実際に風がなかった場合の記録を保証するものではなく、公式記録や公認の判定には使えません。
- 風速は、競技場の風速計が測った値(追い風が+、向かい風が-)を入れます。風は走っている間も変わるため、同じ風速計の値でも実際の影響は少し違うことがあります。
- Mureikaの簡易式: 風は走っている間ずっと同じ強さで吹くものとして、平均の速さで走り切る単純な形にした式です。横風や風向きの変化、選手ごとの違いは扱っていません。著者の2001年の論文(Canadian Journal of Physics 79巻)は、競技場の風速計の読みと実際の風とのずれが±0.7m/s程度になりうるという別の研究者の指摘も紹介しています。
- Moinatらの実データ式: データのほとんどが海抜0m付近の大会の記録で、標高の高い会場にはそのままは当てはまりません。この式は標高を計算に入れていません。風速は−2〜+2m/sの範囲のデータがほとんどで、著者はその範囲の外では注意して使うよう述べています。風が走っている間ずっと同じとは限らないこと、風速計の読みと実際の風とのずれは、式に入れていません。
- 200mの風の影響は、コーナーや走るレーンによって変わります。このツールの式は、そうした違いを扱っていません。
- ハードルは、100mハードルと110mハードルをまとめて求めた式です。
- 50m・55m・60m・150m・50mハードル・55mハードル・60mハードルは、このツールでは換算の式を用意していません。風の条件の判定だけができます。
- 風の条件の欄は、追い風が+2.0m/sを超えるかどうかだけを判定します。公認記録には風以外の条件もあり、それは判定していません。
- 混成競技は、種目ごとではなく、風速を測る種目の風速の平均が+2.0m/sを超えるかどうかで判定します。このツールの風の条件の欄は、1種目の風速で判定します。
- 大会記録は、大会の規定で風の条件を考慮しないと定めている場合があります。
- 換算後の記録と差は、小数第2位に四捨五入して表示します。
よくある質問
無風換算した記録は、公式記録や公認の判定に使えますか?
追い風が+2.0m/sちょうどの記録は、参考記録になりますか?
風速のマイナス(向かい風)は、どう入力しますか?
向かい風の記録も換算できますか?
50mや60m、150mの記録は換算できますか?
標高が高い競技場の記録は、どう換算されますか?
「参考値」と表示されるのは、どんなときですか?
女子や、記録の遅い選手にも使えますか?
風速計の読みと、選手が受けた実際の風はずれますか?
混成競技も、種目ごとに追い風の上限で判定しますか?
大会記録にも、風の条件は同じようにかかりますか?
出典
換算の式(論文)
- “Back-of-the-envelope” wind and altitude correction for 100 metre sprint times(J. R. Mureika、2000年6月に公開(プレプリント))
- A realistic quasi-physical model of the 100 metre dash(J. R. Mureika(Canadian Journal of Physics 79巻4号 697-713頁)、2001年)
- The Legality of Wind and Altitude Assisted Performances in the Sprints(J. R. Mureika(New Studies in Athletics 15巻3/4号 53-60頁)、2000年)
- The Effects of Temperature, Humidity and Barometric Pressure on Short Sprint Race Times(J. R. Mureika(Canadian Journal of Physics 84巻4号 311-324頁)、2006年)
- Data-driven quantification of the effect of wind on athletics performance(M. Moinat, O. Fabius, K. S. Emanuel(European Journal of Sport Science 18巻9号 1185-1190頁)、2018年)
風の条件(競技規則)
- 陸上競技ルールブック2026年度版(競技規則・競技会規則・公認記録規程)(公益財団法人 日本陸上競技連盟、競技規則は2026年4月1日修改正、正誤表は2026年5月17日現在)
- Competition and Technical Rules(Book C: C1.1 & C2.1)(World Athletics、2026年7月1日更新の版)
当サイトは民間のサイトで、日本陸上競技連盟・ワールドアスレティックス・各論文の著者が作成・監修したものではありません。換算は研究者の式による推定で、公式記録や公認の判定には使えません。公認記録の扱いは、大会の主催者・競技団体にご確認ください。